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田野と四万十川の話−4

火振り漁編



 四万十川に古くから伝わる「火振り漁」という伝統漁法があります。
 岐阜の長良川では鵜飼い漁法が有名ですが、火振り漁とは・・・?
 昼間のうちに川に仕掛けた網に向けて、暗くなってから四方の船が火を揺らして
 徐々に網の方に近づくと、寝ていた鮎が驚いて網の方に逃げ、一網打尽に捕まる・・・
 という漁です。う〜ん、これはぜひ見てみたい!
 そして出来ればやってみたいですよね?


 でも船と道具と漁権がないと出来ません。運良く出くわさない限り、
 見られる事はないと思っていました。ト・コ・ロ・ガ・・・ご近所の森さん宅の
 お爺ちゃんは、漁権も船も持っていたのです。そして我々の為に
 「火振り漁」をやってくれる事に・・・しかも我々を船に乗せて、実際に
 体験させてくれる事になりましたぁぁ!超ラッキーっすぅぅ!


 陽のあるうちに泳ぎながら網を仕掛け、早い夕飯を済ませると川原に集合です。
 カンテラの灯かりの中で、長い竿の先に鉄製の籠(=篝:かがり)を付け、
 そこにくべた薪に火を入れ、篝火(かがりび)をおこします。四万十川の川漁師は、
 木製の手漕ぎ船を器用に操ります。その漕ぎ姿のシルエットがいいんですよぉ、
 とても!亭主が船尾で櫓を操り、女房が船首で篝火を左右に揺らす…
 伝統的な火振り漁が始まります。

          

 船はゆっくりと進みます。竿先の篝火が、ゆったりと右に左に振られます。
 夜の川面を、四方からの篝火が闇の中を揺れながら集まって来る様は
 とても幻想的で、まるで能の世界に浸っているかのようです。暗闇の中で、
 川面が照り返す篝火だけが幽かに揺れています。初めてなのに懐かしいような、
 じっと見ていると体が宙に浮いているかのような、不思議な思い、
 感覚に包まれます。田野も船に乗り、竿を持って篝火を揺らしてみます。
 なぜか厳粛な気持ちになり、身が引き締まります。

 30分もたったでしょうか?仕掛けた網を丁寧に手繰ります。集められた網は、
 岸に竹で組まれた干し竿に広げられます。カンテラの灯かりが網を照らし出す…
 いるいるぅー!鮎だ鮎ぅ!ついてるついてる…わぁ、大漁だぁ!おいしそ〜!
 しかも・・・キレイだ!天然の鮎は色もシルエットも!婚姻色のウグイも混ざってる!
 皆で網から外して行きます。火振り漁の見物に付近のキャンパーや
 同じ宿の宿泊客なども集まり、川原は夜だというのに結構賑わっていました。

     

 あまりの大漁に外しても外しても作業が終わりません。見物の子供達にも手伝わせ、
 お土産に持たせます。ん?妙に明るい?カンテラの灯かりの他に、いつの間にか
 月の灯かりも差し込んで来た川原に、至福の時が流れます。三々五々、やがて
 徐々に人も散って行き、川は元の静けさを取り戻します。ようやく作業が終わり、
 片付けが終わると森さんにお礼を言い、両手の魚篭一杯に鮎をぶら下げて
 宿に帰ります。

 翌日の大正温泉の夕食が、思いっきり鮎尽くしだったのは言うまでもありません。
 「やっぱり四万十川の天然鮎は美味い!」などと他の宿泊客達が
 言ったかどうかは判りませんが、なぜか笑いの止まらぬ田野がいましたぁ(^^)。
 あっはは〜!さて!次は何をして遊ぼうかな(^^)/

                                     つづく