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つれづれ日記

田野の日本紀行−19

南東北・会津 編


 会津界隈もまた、忘れ得ぬかの地である。
 大学3年の夏、サークルでの分散旅行に、まだ一度も行った事のない南東北行を、
 サークルの幹部&先輩の権限を過剰なまでに駆使して勝ち取ったのであった。

 五つのグループに分かれる分散旅行では、それぞれの班が暗黙の課題を意識していた。
 それはサークルの伝統?になりつつあった「旅の恥はかき捨て・全員参加の一発芸」である。
 その証拠ネタ・写真を残す事!それを帰京後に審査し、
 その年のグランプリを決めよう
・・・ワケワカンネ-!この代は幹部が悪かった?
 今から思うとホントにアホ臭いが、結構本気で取り組んだ。いや、でも実に楽しかった〜♪



 −二本松・岳温泉♪−

 二本松から岳温泉へ。高村光太郎の妻・千恵子の生家があるというこの地を訪ねる。
 演目No.1「あれが安達太良山。あの光るのが阿武隈川」ごっこ作・演出 田野ユタカ
 これがやりたくて夕暮れ時、観光もせずに涼やかな風が吹く小高い丘を探す。
 んがぁ〜、んな丘は・・・ないないない(泣)。ただただ暑かった。田野先輩のセレクト不評。


 −阿武隈鍾乳洞♪−

 郡山から磐越東線に揺られて少々。ここは後輩達のセレクトだが、とにかく涼しくてGoo!
 山口の秋吉洞と並ぶ規模はともかく、自然が作り出した鍾乳石の造形美は秀でている。
 男性の象徴や女性の象徴・・・う〜ん、これは本当に一見の価値はある。素直に感動する。
 演目No.2「ソノモノの前で写真撮りし恋人達は幸福になる」伝説作・演出 田野ユタカ
 グーパージャンケンで即席カップルに分かれ、それぞれにポーズをつけて写真を撮る。
 その時は無邪気だったが、写真の出来あがりは・・・ん?うぐ〜。でも・・・メチャ笑える♪
 しかしこの時の即興カップルの中で、結ばれた二人は・・・ないないない。皆無!


 −猪苗代湖♪−

 でかい!広い!ノーベル博士として有名な野口英世の生家跡に記念館が建っている。
 演目No.3「野口英世」物語【作・演出 田野ユタカ
 狙いはよかったと思ったが、ストーリーが地味で、と言うか野口英世がどんな人かを
 メンバーが知らな過ぎて・・・不評・玉砕(哀)。


 −五色沼と会津磐梯山♪−

 その後リピート旅もしたほど、ここは感動した!沼はそれぞれに彩りが違う。
 季節や天候でも変わるらしいが、深い藍色や淡いエメラルドグリーン、ターコイズブルー、
 大小の沼々がひしめく中で、何でこんなに一つ一つが違うんだろう?不思議&神秘。
 日本酒のCMで昔から知っていた会津磐梯山も、美しい稜線を持つ雄大な山だった。
 自然を生かした遊歩道も整備されていて歩き易い。一通り廻って毘沙門沼に戻って休憩。
 磐梯山が正面に眺められて素晴らしい景観。湖畔には観光イベントに使われるのであろう、
 木作りのステージがある。皆の目の色が変わる。アイコンタクトが飛び交う。直感が走る。
 総勢10名全員ステージに上がる。周囲の観光客が「何事か?」と立ち止まる。
 何かをやらねば、何かをやりたい。「五色沼へお越しの皆様〜!」 田野が一歩前へ出た。
 「どうぞご唱和下さい!美しい会津磐梯山に・・・バンダ〜イ!バンダ〜イ!バンダ〜イ!

 演目No.4「磐梯三唱」【作・演出・脚本 誰かの思いつき!】
 観光客からは拍手喝采だ。写真を撮ってる人もいる。
 大爆笑?失笑?嘲笑?まぁいいかぁ〜!!!吹っ切れたぁ〜!!!

   


 −会津若松♪−

 白虎隊伝説を追う。鶴ヶ城の炎上を見紛うて全員が切腹したいう飯盛山。
 有名な悲話の伝えられる山の上には記念館と供養の碑が建っている。
 時が流れたとはいえ、当時十代の若者達のピュアさはとても揶揄出来る話しではない。
 凛とした歴史の空気が印象的な城下町だ。老舗の酒蔵が多いのは雰囲気がいいネ。
 でも盆地だからやっぱり夏は暑い。桜や紅葉の頃に来てみたいと思った。


 −会津喜多方♪−

 当時は喜多方ラーメンなんて聞いた事もなかった。喜多方は古き良き蔵の町。
 桐下駄が有名で、工房の脇には堆く積まれた原料の桐の切り出しが風情を感じる。
 会津駄菓子屋、造り酒屋、蔵を改装した喫茶店はコーヒーも美味で最高の雰囲気。
 日本の夏・・・簾格子と西瓜と団扇と浴衣が似合う町。どこからか仄かに蚊取り線香の匂い。
 後輩達は観光に急いだが、ここでは田野先輩は蔵の喫茶店でまったり時を過ごした。
 演目No.6「夏休み・ずる休み」【観客0】zzz ZZZ zzz
 最近は随分変わったようだが、当時はゆっくりと時が流れる美しい町という印象だった。


 −二俣川温泉♪−

 大丸あすなろ荘。須賀川駅に迎えのマイクロバスが来る。お客は我々だけだ。
 そこから山道を揺られること約二時間。長い。旅の終盤で、皆疲れも出始めていた。
 退屈させてはいけない。ハンドマイクを手に取る。
 演目No.7「田野ユタカ・歌謡ショー♪」【全編アドリブ】
 様々なゲストが出て歌い、司会者がインタビューをするそのショーの出演者は(?)
 チューリップ、吉田拓郎、荒井由実、サザンオールスターズ、沢田研二、三波春夫?
 知っている歌は誰彼となく合わせて歌っていた。車中は大爆笑で賑やかだった。

 笑い疲れてまた静かになった頃には到着。山間の出湯は、人里離れた隠れ湯だ。
 ここの天然地形まんまの岩風呂は、本当に質のいい湯だった。獅子鍋も美味!
 川原の露天風呂は本当に気持ちいい。夏でもさすがに涼しく、長湯も苦にならない。
 お気に入りの宿になった。美しい山間の湯の宿にはその後も遥々リピート旅をした。
 そしてこの宿はその後、「日本の秘湯を守る会」の会長になっていた(驚)。


 大笑い・大爆笑の南東北・会津の旅は終わった。楽しかったぁ〜!
 しかして帰京後の審議の結果、当然我々のグループがグランプリになった。
 演目「磐梯山唱」が評価されての栄冠だった。我々の苦労は報われたぁ〜♪
 ・・・が、「旅の恥はかき捨て・全員参加の一発芸」エントリーは?え?一組だけ?
 真剣にやったグループは我々だけ?裏切り者〜(泣)
 それらの写真は、学祭では品位に問題有との事で飾られる事もなかった(寂)。

 でも、あの夏の会津の旅は、風光明媚かつファニーorストレンヂな写真達と共に、
 今でもなお思い出し笑いで吹いてしまう思い出の一頁なんだ♪


                                         おしまい