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つれづれ日記
田野の日本紀行ー24
尾道坂道映画町 編
尾道の坂を 寄り添い歩く
ふたりの上に 雨が降る
傘をさすその手に 桜散る散る
見上げればそこに 千光寺
“尾道葉桜春小路♪”より
尾道への旅は、仕事を兼ねた前ノリの日曜日だった。 季節は4月の中旬。噂に名高い桜も盛りを過ぎて、葉桜になっていた。 幸か不幸か…雨だった。でも今思うと、雨なのが却ってよかったように思う。 坂と港の街には、春の風情が香っている。 大林監督の映画の舞台としても有名な尾道への、これが初めての旅だ! 旅の前と後に、田野はレンタルショップで尾道三部作のDVDを借りて観た。 尾道三部作:「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」 新尾道三部作:「ふたり」「明日」「あの、夏の日〜とんでろじいちゃん〜」 リアルタイムではさして気にもとめなかった映画達だが、案外面白いと思えた。 月日を経て、実際に尾道も知ると、見方が違うのか?当時は良さに気付かなかったのか? いずれにしても尾道の旅は、絶対にミーハーになる方が楽しいぞ♪ − 飛行機?列車?やっぱ…列車 − 新幹線で行くか飛行機で行くか…尾道は東京からだと非常に微妙な位置にある。 しかし旅情はやはり列車の旅であろうと、鉄道をセレクト。のぞみでゆったりのんびり。 車窓の風景を楽しみながらも、汽車の旅では微妙な領域の時間帯に突入?悶絶する。 喫煙席にしておいてよかった(笑)。福山迄行き、在来線に…ん?乗り換え時間が3分? それを逃すと30分近く電車がない(汗)。折角だから、少しでも早く尾道入りたい! ダッシュ!余裕のフットワーク(?)で無事在来線に!城下町福山を、進行方向の右に福山城。 左に地方都市の風景を進み、徐々に山間に変わり、程なく海に…ん?狭い。運河?いや、 これが有名な尾道水道との出会いであった。来たぞ!尾道坂道映画町!駅を出て振り返れば、 駅舎も度々映画に登場する馴染みのある外観…ミーハーだと町への親しみがグッと増す♪ − グリーンヒルホテル尾道 − 駅を降りてすぐに思うのは、本当に尾道には平地がない。 駅から海(尾道水道)迄の距離は僅かで、その逆側にはすぐに山が立ち上がり、 尾道城が見える。駅ロータリーを回ると、映画「転校生」や「さびしんぼう」で度々登場する 渡船の桟橋がある。この船着場に隣接し、尾道水道に遮るものなく立地している グリーンヒルホテルが今回の宿。部屋からは向島への渡船の桟橋や、 しまなみの島々への船着き場が眼下に望めて中々Goodだ! ここを起点に散策に出発。雨の中をコミュニティーバスに乗り遅れ、 やむなく国道を歩く。程なく「転校生」や「ふたり」に出てきた、線路を跨ぐ陸橋があった。 初めてでもすぐ判るものだ。そこかしこで映画の中の風景に出くわす。 こりゃホントに楽しい町だなぁ♪ − 千光寺 − 駅から15分程歩くと、千光寺上の展望台迄行けるロープウェイ乗り場がある。 乗り場のすぐ脇には瀟洒な喫茶店があり、これまた「転校生」に出て来る店だ! ロープウェイも映画によく登場していた。年季を感じるが、ガイドさんは若くてかわいい♪ そのガイドさんの初々しい説明を聞いていると、徐々に尾道の町の全容が見えてくる。 尾道って町は、山側を昇ってしまえば何処もかしこも絶景ポイントだ。頂上の展望台でお茶。 所々に葉桜が点在する中で、雨の中でも尾道水道は手に取るようにその全貌を見せてくれた。 しばし言葉もなく眺めていたい風景。向島の家々や造船所迄よく見渡せた。 千光寺まではここから少し下る。断崖絶壁とは言わぬが、古人はよくぞこのような所に 信仰の象徴を建立したものだと感心する。盛りには見事であったろう道中の桜は葉桜となり、 それもまた趣があった。むしろ雨と重なって人影も疎らな葉桜道は、より風情が薫る。 雨中でも桜はハラハラと散り続け、時折傘をさす手に雨の滴と共に纏わり付いた。 もう夕暮れ時。御札売りのおばちゃんが、締め掛けたお堂をさり気無くまた開けてくれた。 しっかりお参りさせてもらった。千光寺は…なるほど!お勧めスポットだ…と納得する。 − 商店街 − 千光寺からの帰りは、アーケードがあって雨を凌げる商店街を歩いてみたが、 いわゆるシャッター商店街の様相で、少々寂しい。尾道は坂が多いから、高齢化で 住民が住み続ける体力を維持出来なくなり、家を手放して他へ移り住む人が多いと聞いた。 時代かとは思うが、実際に住む方々にとっては仕方がないのであろう。 しかしこの商店街もまた、「さびしんぼう」や「転校生」でよく出て来たのだ。 明治時代のお風呂屋さんが、そのまま喫茶店併設の食品店になってる「ゆーゆー」はいい! 興味深い品々…昔の駄菓子屋さん風の品揃えや広島焼用ソース、 果ては高級土産用和菓子・・・等々。 店内はいつまでもそこにいたいと感じさせるノスタルジーとお洒落さが混在している。 「サクラどら焼き」を買ってご賞味。桜に花の塩漬けがアンコとマッチして美味♪ 商店街にある尾道商工会議所の建物も味わいがある。自由に見学出来て、 天然地形の良港である尾道水道を有した事で、造船と海運で発展してきた歴史が薫る。 尾道は拘りのありそうな昔堅気のコーヒー屋さんが、町のあちこちにあるのがまたいい。 喫茶店好きの田野は、その全てにいちいち入ってみたくなる。一日で尾道廻るのは…ムリ。 更には新興文化であろう尾道ラーメンの店はここかしこにあった(笑)。もちろん…食べた♪ − 尾道 夜〜朝 − ホテルのレストランも上品で、Barとしてもその景観が生きる。 桟橋直結なので、恰好のデートスポットでもあるようで、木製のお洒落なデッキには、 メモリアルデーとお察しするカップルもチラホラ…見て見ぬ振りしつつ、 ちょっと応援(笑)。きらびやかな夜景はないが、 その方が尾道水道らしいように思う。電飾は似合わない。 渡船や漁船の気配は夜通し窓の外に漂ったが、それは心地よい子守唄でもあった。 静かで、そして優しい宵の時間が流れていった。寝るのがもったいないような感覚… でも都会のつまらないストレスなどいつしか忘れて、深い眠りに落ちていった。 翌朝は雨も上がって晴れた!窓の外の尾道水道も向島もホントに綺麗で爽やかだ! さて今日は…お仕事を頑張りますかぁ〜♪ 今回は仕事を兼ねた旅だったけど、いつかゆっくりと訪れたいぞ…尾道♪ 葉桜の頃に 告げた思いが 君に届くよう 届くよう “尾道葉桜春小路♪”より おしまい |