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つれづれ日記

田野の日本紀行−25

昨日、中標津で 編

 
 北海道の中標津って、皆さん知ってるかな?道東の自然豊かな、酪農の町。
 これまた随分と昔の話になるが、田野はこの地に3日ほど滞在した事がある。

  北海道がブームになり、「幸福の黄色いハンカチ」「遥かなる山の呼び声」といった、
  高倉健さん主演の山田洋二監督の映画が共感を呼び、感動の大ヒットとなった頃。
  別海町や中標津町は、道東の広大な自然と酪農の雄大な景色とで脚光を浴び、
  当時の全○空系列のエアーニ○ポンさんが東京・羽田空港と新装された中標津空港に、
  直行便を就航させる計画を立てていた。

 プロペラ機の受入設備しかなかった空港に、小さいながらもジェット便を寄港させる為、
 新機材を調達していたエアーニ○ポンさんの案件に、田野のH社の提案がフィットして、
 新規取引が成立。その機材の納入に、地元販売店と一緒にメーカー側として立ち会う為、
 羽田から…何故か千歳空港に…で、プロペラ機に乗り換えてようやく辿りついた中標津。

 新装なった中標津の空港は、小じんまりとした木の温もりが心地よいかわいい空港だった。
 そう、直行便が就航するから機材を入れるので、まだ就航していないのだから千歳経由…。
 遠かったけど、その遥々感が道東であり、中標津というブランドの尊さにも思えた。
 大草原の中の小さくてお洒落な空港…夢の入り口に携わるような感覚の仕事だった。

  入れる機材は所謂タラップ車。1種類の航空機に対応すればいいのだから、
  成田や羽田で使っている、あらゆる航空機種に対応する機材ではスペックオーバー。
  うちで一番小さいタイプのトラックに、
  I製作所さんが施した架装の機材で提案コンペに臨み、見事に勝利♪
  でも…タラップ車は100%舗装路&平坦地である空港でこそゆっくりなら走れるが、
  転倒角度や全高、空力特性等からとても一般道を自走は出来ない。

  空港に到着したタラップ車は、架装部分が大幅に分割されていて、この復元が前提。
  え?この日機材を確認し、地元販売店と納車や今後のアフターサービスの打合せをし、
  明日午前中にお客様に引き渡して、取扱説明等を終え、午後には千歳経由で帰る…
  つもりだったが、I製作所さん2名ではとてもこれを短時間で組み立てられないのでは?

   

 ネクタイを外し、H社のつなぎに着替える。う〜ん、不思議と背筋がシャンとする。
 普通逆だろうが?まぁ田野の場合はそうだった。それに妙につなぎ、似合うんすよ、俺♪
 地元販売会社のサービス主任さんと田野は、腹を括ってこれを手伝う事にした。
 この物件を含め、うちがこの市場で急速に大きく成長したのはI製作所さんのお陰だった。
 現場は大変なんです。便をキャンセルし、宿を確保し、気合いで組み立て作業!
 ん?何か妙にチームワークいいぞ♪快調快調(^-^)v

  緑も綺麗だし、道東の風が気持ちいい。何よりも空気が美味しい♪
  確か季節は6月。梅雨のない北海道では、ようやく来た春に新緑が芽吹き、
  初夏への序章が始まる時期。会社に出張が1日伸びる旨を連絡。まだ携帯はない。
  電話の向こうで当時の上長がギャーギャー何か言ってるが、10円玉が切れた。
  ウザいのでもう電話はしない。用があるなら空港事務所やホテルにかければいい。

  作業は我々が加わった事で予想以上に捗り、翌日には納入セレモニーに漕ぎ着けそう。
  暗くなるまで作業をして、夜ホテルに送ってもらうので、初めて中標津の町中へ。
  賑やかではない素朴な町並。ホテルも地味だが、高倉健さんの映画に出てきそう(笑)。
  この時期、まだ暖房が入っている。さすが道東だ。確かに夜は寒い。
  案内された普通の御飯処?居酒屋?綺麗ではないが、心落ち着く佇まいだ。いいなぁ。
  ビールんま♪食べ物は…うんま〜〜〜!!!さすが道東中標津!魚魚肉野菜魚介〜!

 
     

 無事に納入を終え、翌々日の午後の千歳行きに乗って帰れる目処がついた。
 午前中に取扱説明の最終を終え、昼食。いよいよ帰りの便にのるべく、
 つなぎを着替えてシャワーを浴びたい
が、ホテルはチェックアウトしていた。
 地元販売会社のサービス主任さんが、「是非我が家で着替えて風呂へ」と言ってくれた。
 お言葉に甘えて車で移動。

 ご自宅近くの森から、キラキラしたものが見える。
 主任さんが車を停めて、見せてくれた。それはすんごく水が澄んだ川だった。
 秋になると、鮭がここを産卵の為に溯上するんだそうな!ひえ〜!身近なこんな川を?
 鮭が自然のまま溯上するという川を初めて見た。神秘的な生命のドラマが営まれる川…
 当然捕獲禁止=保護されているとのこと。

 でも日の光と森の緑と空の青を照り返してキラキラとサヤサヤと流れる川。
 川面を溯上する鮭達の感動の息吹を感じたかった。その季節には凄いんだろうなぁ。
 しばらくは想像の中で立ち尽くしていた。これが北海道…小さな感動だった。

  その日の夕方、羽田空港に到着した田野は、まだ社に戻れなくもない時間帯であったが、
  躊躇いなく帰宅の道を選択した。
  その手には、お土産に持たされた冷凍の新巻鮭が・・・
  ビニール袋に入れられただけのままで持たされていた。
  外からも判るし、溶けてきたら臭うし、少し顔を赤らめて真っ直ぐに帰宅した。
  誰かに「それどうしたの?」と訊かれたら、「昨日、中標津で…」と答えただろう。
  でもその新巻鮭が…メッチャ美味しかったのは言うまでもない♪

  それからまもなく、TVでは倉本聡脚本の「昨日、悲別で」というドラマがスタートした。
  何の関係があるんだか(笑)。
  でも道東・中標津。あれからまた随分と時が流れた。変わったんだろうなぁ。

  空港には今ではボーディングブリッジも掛ったと聞くけど、
  田野にはやはり思い出深い、遥かなる北国の彼の地の一つなんです。


                                    おしまい