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田野の日本紀行−5

飛騨路 後編

 

 *飛騨古川

          
♪たゆたう掘割 古川の 水面に戯る錦鯉

           遅咲き桜や 皐月の空に 映えるは古木の若緑♪  飛騨路♪より

 高山の北方に、かの地「飛騨古川」はあります。高山とはがらりと雰囲気が変わり、
 素朴になります。高山に似せて開かれた城下町なんだそうですが、
 瀬戸川に沿って白壁の土蔵が並び、出格子の家々が美しい、
 高山の喧騒とうってかわった静かな情緒につつまれます。
 掘割を流れる疎水の澄んだ水の中には、鮮やかな錦鯉が涼やかに泳いでいます。
 表面に苔が生えているかのような、樹齢を重ねた古木の姿やその緑にも
 深い味わいがあります。一之町の古い町並みは、高山の後に来るとホッとしますよ!
 癒しの町ですね。ここは歩く…そして空気の体感…
 もし行くことがあったら、深呼吸してみて下さい。大人が歩いて絵になる町ですネ!


 *白川郷

        ♪雪解け間近い白川で 心を尋ねた吊り橋の上

                 合わせた手のひら合掌造り 祈る思いは昔も今も♪    飛騨路♪より

 初めて行った時、確かに山里の秘境でした。今は観光スポットとして脚光を浴び、
 道が開かれ、スーパー林道なんてのが出来て、観光者が歩き易いように
 村も山も川も削られてしまいました。村の暮らしや訪れる人々にはいい事なんでしょうね?
 でも詞にした吊り橋も、そこから眺めた深い淵の藍の川も渓谷ももうありません。
 のっぺりとした人工的に広く直進させられた川には、それでもアマゴやイワナが
 元気に棲息していました。救われます。放流ものかな?
 合掌造りの家の中には、民宿として泊まれる家もあります。
 冬に暖かいその造りは、真夏に泊まらない方がいいですよ(笑)!
 「飛騨路♪」は曲が長いので、実は普段は歌わない二番の隠れ歌詞があります。

         ♪寄り添い見つめた囲炉裏火の 陽炎揺らめく薄闇に

            とかれた黒髪君の背中を 流るる命のやわらかさ♪   飛騨路♪より

 初めて行った頃の白川を、歌に残せてホントに良かったと思います。
 今でも鮮明に浮かんで来ます。素朴な山の民が、自然と共存する術を身につけて
 根を生やして暮らしている…そんな印象でした。

 白川の手前の御母衣ダムのダム湖のほとりには、ダムに沈んだ村の鎮守の桜の木が、
 村人達の熱意で移植され、しっかりと根付いて春には満開の桜を咲かせ、
 村人達がその木に集まって、ダムに沈んだ村を偲んで花見をするんだそうです。
 岐阜県には、ダムにまつわる悲しい歴史が多いですね?
 その桜の木は国道から見る事ができます。
 優しくて、力強い立ち姿は、心なしかはかなげに見える時があります。


     

 *下呂温泉

      
♪ちらちら川面に揺れる灯かりは 灯篭流しの小さな舟さ

          幾つもの思い出にまぎれて 静かに夏が逝く♪   灯篭流し♪より

 下呂温泉は大好きです。ここへ来たら絶対に山裾の高台にある、
 皇族も利用された老舗旅館の「湯之島館」です。
 化粧部屋、次の間とあって縁廊がついている部屋は、
 日本の温泉旅館の風情を全て満たしてくれるようです。
 全ての部屋から下呂の町と飛騨川が臨めます。深い奥行きと長い迷路のような廊下。
 大正ロマン漂う洋間もあります。「木造り」…しかも年代ものの黒光りした味わい、
 「湯殿」はもちろん、「家族風呂」も贅を尽くした造りで、
 近年の温泉ブームで作られたバブリーな宿にはとても出せない、古き良き時代の匂いがします。
 娯楽室、コーヒースタンドも、なんとも魅力があります。
 敷地内の木々は、樹齢を重ねた風格の漂う古木・銘木ばかり。
 これも成金宿には出せない老舗の味かな…。
 ここは田野にとっては、同時に旅の終わりのイメージです。

 「灯篭流し♪」という歌は、実はここで作りました。地名を特定する歌詞が出て来ないのは、
 この下呂の地では灯篭流しをする風習はありません。
 高台にあるこの宿は、下呂で一番の眺望のよさですから、
 部屋の窓から遠くに見える町灯かりが、川面に映って揺れているのが、
 遠目には灯篭流しのように見えました…。そのままふっと歌にしたのが「灯篭流し♪」です。
 この下呂温泉の、大好きな「湯之島館」で作った曲なんですよ!


 *名残の木曽路…

 下呂を最後に飛騨路の旅を終えるのが、田野のパターンです。
 中央道の中津川から高速に乗りますから、木曽路に戻る感じになります。
 妻篭・馬篭もいいですよね?観光色が豊かですが、
 帰りしなに昼食やコーヒーを飲みに寄ります。
 結局、木曽路の旅で始まり、飛騨路の旅の後は再び木曽路に戻る…
 木曽も飛騨も、田野のなかでは一つの旅の中の風景なんです。
 名残を惜しんで、旅にしがみついていたいかのような感覚です。
 そう言えば…中津川の駅前の交番で昔、駐禁切られたんだ!
 許してくれそうだったのに、その巡査が「この中津で何かしたら、この俺が許さん!」
 なんて駐禁くらいで啖呵切るから噴き出しちゃったんだ!そしたら…切符切られた…。
 でも探してみても、嫌な思い出って、とるに足らないそんな事くらいだなぁ…。
 好きです。飛騨路!

                                               おしまい