田野の日本紀行ー6
みちのく編
始めて東北へ行ったのは高校の修学旅行でした。これがまた紅葉の真っ只中の、
一番いい時に行きましたし、なんせ高校時代の真っ盛りでしたから、
面白い話は尽きませんが、二度目のみちのく旅行の話をしましょう。
大学一年、18才の夏のサークルの分散グループ旅行でした。
先輩♂2人、先輩・同級♀2人と田野の、男女5人の組でした。
☆田沢湖発(^^)
サークルの合宿を張ったのが、秋田県の田沢湖の近く。
蕨座という劇団系の施設だったと思います。この合宿の後に引き続いて、
幾つかの班に分かれての分散旅行がスタートします。三年のK村部長が一緒で、
この部長が旅の達人というか情報の宝庫でしたから、
皆の我侭なリクエストも絶妙にコースに取り込み、5人の珍道中がスタートします。
☆カワヨグリーン牧場(^o^)
詳細には覚えていませんが、最初の宿は青森県の三沢市に近い向山にある
川要(カワヨ)グリーン牧場の丘の上にある「カワヨYH」でした。
広大な牧場の中のYHは絵のようで、後々これが大きな出会いとなるのですが、
ここではサラッと流しましょう(後日、別の日記で詳細に)。
翌日、朝露の草原で童心に返ってはしゃいだのをよく覚えています。
女子も混ざって青蛙採り合戦をしたり、バトルロイヤル(?)等に興じて遊びまくりました。
スカッとしたなぁ…!この日は下北半島東端の「尻屋崎YH」まで移動です。
☆下北・尻屋崎(>_<)
本州最北端は大間崎ですが、ほぼ等しい位置にある尻屋崎は、
北と東に視界が開けた景勝地です。日本馬が放し飼いにされていて、
ほとんど野生化しています。温厚で害のない性格との事ですが、
傍で見ると大きくて迫力ものです。天気が良いとのんびりした美しい岬です。
下北半島のこの岬までの太平洋側は、自衛隊だかの実弾演習が行なわれる為、
人が入れません。その為、人気のない手付かずの自然な海があると聞き、
我々はときめきます。「こっそり入っちゃおう!」と思いつき、原野に分け入ります。
どんどん行くど〜!道は背丈より少し高い潅木が多く生えている狭い獣道です。
しかも行けども行けども海に出ません。道に迷ったか?焦燥の空気が漂います。
そのうち道は急傾斜の下りとなり、女性には危険なので引き返そうとした時、
なんと狭い道の真正面から馬がトロトロ歩いて来ます。で、でかい!
す、すれ違えない!絶体絶命の袋小路?ひえ〜!
☆漁り火のイルミネーション(@_@)
結局我々は、女子を足元にしゃがませて守り、獣道の潅木と馬の体に思いっきり挟まれ、
ブッシュに擦り傷が出来る程押しつけられて、ホントに漫画みたいに
命からがら逃げ帰って来ました。あの馬、人がいても全く恐れず動じず、
マイペースで行きやがった。どこが温厚じゃ〜!性格ワル〜!
夜!宿で疲れた我々を待っていたのは…うわ〜!何だこれ?そうです!
「初めての北海道編」にも出て来た、あの漁り火のイルミネーションです。癒される〜。
この幻想的な光景は、夜通し窓の外に気配を漂わせ、旅の思い出を彩ってくれました。
これだけは見た人じゃないと判らない。夜通し興奮して寝られないと思っていたら…爆睡!
翌日は…恐山経由の薬研温泉泊まり。ここらで温泉を入れないとね!
☆奥薬研温泉!(^^ゞ
恐山の観光案内を書いても仕方ないので、奥薬研温泉の話をしましょう。
宿の内風呂もよかったけど「山の方に10分程歩くと露天風呂がある」
との女将の話に一同興奮。「暗くて獣が出るかもしれない」と聞いても行く気満々なのは…
ありゃ?田野とK村先輩の二人だけ?当時は今日のような温泉ブームではなく、
露天風呂が珍しかったので、二人で夜道を探し歩きます。月明かりで道が見えます。
「混浴たってどうせ婆さんしかいないぞ、田野!」
「K村先輩、何考えてるんすか?俺は純粋に大自然を満喫したいだけっすよ!」
「あっはっはっはぁ〜!」 無意味に力んだ笑い声が夜空に響きます。
程なく露天風呂は見つかり、早々に入湯。広い!誰もいない!いいな〜!気持ちいい!
でもちょっとぬるいなぁ…「暗いし風邪ひくから早めに出るか!」と申し合わせたその時、
月明かりに浴衣姿の人影を見たようで、二人とも固まります。こ、ここは恐山が…ち、近い?
☆初露天風呂…の悲劇?\(^o^)/
今から思えば、年の頃22〜25歳くらいの、それはカップルでした。
我々二人を見て、離れて入るかと思われたカップルの、女性の方が声をかけて来ました。
「暗くて怖いから…そっちに行ってもいいですか?」
すかさずK村先輩が「い、いいですよ〜!いいですともぉ!」
いつもよりオクターブ高い声で答えてる。本当に来る来る。
今みたいにバスタオル巻いたりなんかしないから、手拭いで前を隠しながら来る来る。
近くに来ると月灯かりで顔がよく判る。美人じゃ〜ん…。なんで?狐に化かされてる?
男の顔はまぁ〜ったく覚えてないけど♪
大人っぽい(老けてる?)K村先輩と男は、そつのない世間話を始めてる。
女性の方が田野に話しかけて来る。「何処から来たんですか?」
「と、東京!」 あ、くそ!なんで声がひっくり返るんだ?
…でもぬるいから出ないと風邪を…あぁ!で、出れない〜!
なんせ18歳!げ、元気すぎるぅ〜〜〜!!!
☆津軽・蟹田町(T_T)
カップルが立ち去るのを見届けると、二人は慌てて露天風呂を上がります。
次の日は、ちょっと移動距離が長い津軽…田野が行きたいとリクエストしたのですが…
後悔していました。「ふぇ〜くしょん!」 田野は完璧に風邪っ引きです。
なんでK村先輩はくしゃみ一つしないんだぁ?人間かぁ?
津軽半島の根元の青森側の海沿いにある蟹田町で、宿を探します。
今から思うと、「寅さん」が泊まるような商人宿の、海の見える一室で到着早々寝込みます。
その間、皆がどうしていたのかは知りませんが、熱でボーっとした耳に、
海峡の海鳴りと風の音が聞こえていました。北の最果ての
「こんな木賃宿で俺は朽ち果てるのか」…なり切り演歌の世界にワープした田野は、
耳鳴りのように「遠い津軽三味線の音を聞いた」ような幻聴を覚えます。
連れの女性二人が、時々様子を見に来て頭のお絞りを替えてくれていたと思います。
「女の情けが身に沁み」ました。今思うと稀に演歌系を作る時、この経験が生きてる…?へ?
☆旅は哲学…?(^_^)v
翌日はメッチャ元気!十和田湖へ向う道中も、宿でも、帰京の汽車の中でも、
K村先輩との激論バトルが白熱します。
「田野は露天風呂で女の裸見て興奮して熱出して寝込みやがった。
その点、俺は人間が練れてるからな!」
「あんなぬるい湯にあんなに長く浸かってて、風邪一つひかない先輩は人間じゃない!」
「じゃ何でお前出なかったんだ?」
「いや、先輩こそすぐ出ようって言ってたのに何故ですか?」
議論はいつもここまで来ると、必ず迷宮に入ってしまう…。
この先の答えを知っている先輩と田野は、むしろ傷を共有すべき戦友なのではないか?
うーん、哲学じゃ!他の3人は、なぜか飽きれ顔で相手をしてくれない…俺は孤独だ…。
でも楽しかったなぁ!この旅がその後、田野がみちのくにハマルきっかけになりました。
東北大好き!
そのうちまた「その2」でも書くかな・・・つづく
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