田野の日本紀行−7
カワヨ グリーン牧場−編(前編)
♪この空の果て 北国の夏…
青い空の下 そよ吹く風…♪
「いつか見た青い空によせて♪」より
☆川要(カワヨ)グリーン牧場♪
青森県の太平洋側、八戸の北方、三沢の一つ手前…東北本線「向山」駅のまん前に
その広大な牧場はあります。一面の牧草畑が連なり、小高い丘のてっぺんには、
YH(ユースホステル)がぽつんと建っています。前編「みちのく編」にある通り、
18才の時にこの牧場の中にあるYHと出会い、縁あって20才の夏を「ヘルパー」と言われる
ボランティアとして、しっかり者の後輩達と共にこの地で過ごす事になりました。
こいつは忘れられない素敵な体験でした!
☆牧場の朝♪
朝の六時には起床します。牧場の朝はもっと早いのですが、
YHのスタッフの朝はこの時間に始まります。
朝露の中を、ジムニーを飛ばして丘の麓の牛舎に絞りたての牛乳を取りに行きます。
カワヨ牧場では、搾乳機で集めれられた牛乳は、清潔なステレンレスのタンクに
摂氏2℃で保存され、二日に一回出荷されます。そのタンクから、
YHでその日に使う分の新鮮な牛乳をもらって来るのが一日の最初の仕事。
東京よりは遥かに涼しいけれど、真夏の青森もそれなりに暑い。
タンクから柄杓ですくった摂氏2℃の牛乳をぐいっと飲む!美味い〜!濃い〜!
え?お腹は大丈夫かって?全然平気!日課でした。
でも人によるらしいからよい子の皆さんは真似しないでネ!
YHに戻ると宿泊客の朝食の準備で戦争が始まります。
もちろん絞りたての牛乳も少々加熱して出します。
この後、片付け、チェックアウト客の見送り等で慌しい時間が過ぎて行きます。
☆牧場の午前中♪
宿泊客を送り出すと、一服タイム!牛乳は一度温めた後、冷蔵庫に入れますが、
こいつで作るアイスカフェオレの美味いのなんのって…。至福の時は…短い。
その後、皆戦闘モードに突入します。うりゃ!掃除じゃ〜!洗濯じゃ〜!
ドタン!バタン!ガッシャーン!プシュ〜。
思えば…旅立ち前の田野先輩の尊い訓示…「向こうでは自分の事は自分でやろう!」
…説得力なし?後輩達は田野の家事能力を全く信頼していない。
先輩が掃除した後を点検し、洗濯機の前で考え込む先輩を物陰からハラハラと見ている。
「うりゃ〜!」必死に洗濯を試みる先輩を見かねて、後輩達が慌てて飛び出して来る。
早々にミーティング!
結局協議の結果「分担作業として効率化を図る」という結論に…
首うなだれて従う田野先輩。先輩が仰せつかった分担仕事は…外!やた!
外なら任せろ〜!外回りの仕事をする内に…いつしか田野は
つなぎに白いゴム長が定番ユニフォームに…。
そうです。牧場の牛飼い達に重宝がられるようになりました。
☆牧場の昼下がり♪
朝夕を除いては、牧場仕事の手伝いが田野の日課となっていました。
牛舎の掃除もありますが、メインは牧草刈り!
大きなトラクタで一面に生い茂った牧草畑を刈り上げて行くと、
長方形に固められて等間隔に、いわゆる牧草の束が出来て行きます。
こいつを天日で乾した後、でかいフォークで刺し、4Tトラックに積み上げて行きます。
太陽を一杯浴びて育った上質の乾草は、農協に出荷する他はサイロに保存し、
冬季の牛達の貴重な食料として保存します。
この通称「乾草上げ」の仕事が一番きつく、かつ爽快な仕事でした。
一仕事終えると、思いっきり広い草原の木陰で、上半身裸で寝転がり、
一服する煙草の美味いのなんの…。あたりには天然の木苺がなっていて、
こいつをもいで食べるのもまた楽しみ…あ、すっぺ。
木陰を風が渡ってゆく瞬間…多分一番好きな時間でした。
☆牧場の夕方♪
夕方に牛舎から戻ると、夕食の支度と宿泊客の受付で、再び大忙しです。
牧場のオーナー(お父さん)の奥さん(お母さん)は手際良く献立を考え、
テキパキと指示を出します。食材はいつも裏の畑から新鮮な野菜を
調理の直前に採ってくるのです。贅沢ですよね!
畑には茄子、トマト、とうもろこし、胡瓜、キャベツ、レタス、大根、ニンジン、おじゃが等など、
八百屋さんの如く何でもあります。野菜がそうだから…肉は?
「のんべえさん」と呼ばれる居候の先輩に
「ナタ持って牛舎に行って牛一頭潰して来てくれ…」と脅され、
半分本気にして牛舎に行きかけた事もありました。
事務方の責任者で、シャンソン上手な阿部女史に「冗談よ」と教えられます!こ、こえ〜!
田野がキッチンでうろつくと後輩達には邪魔らしく、
シェフとおだてられてキッチンの奥に鎮座し、下ごしらえの終わったメインディッシュを
「焼く・炙る・炒める・揚げる」といった手順の時だけ「シェフ、どうぞ!」と呼ばれ、
おもむろにこの作業をこなし、結構ご満悦でした。手間の掛かる先輩やね?
今思うとあいつ等苦労したんだなぁ…。
☆牧場の夜♪
夜は宿泊客の有志が集まって、いわゆるミーティングと呼ばれる交流会が開かれます。
ギターを弾いて歌ったりもしますが、自己紹介で、全国の様々な場所から
色々な人が一夜の宿を共にしている一期一会の感覚が好きでした。
恐山が近いので、怪談話大会よくやりました。涙出るぅ!
花火をしたり、牛飼いさんの話を聞いたり…そしてYHは十時に消灯となります。
その後はようやくスタッフにも束の間の自由時間です。
夜は涼しいので、外に出て牧草畑の丘の上で、頭を扇の要にして車座になって寝転び、
星を仰いでウイスキーを飲みながら夢なんか語ったりしたのは、
今思うと気恥ずかしいですが、よい思い出です。
一日の疲れがドッと出て、心地よい眠気に誘われます。
☆今でも…♪
こんな暮らしが約一ケ月。
20才の夏と、短かったけど21才の夏を語る時、この牧場暮らしは欠かせません。
今でもこの空の果てには、あのカワヨグリーン牧場はあります。
普通のYHだったら田野は戦力外…?
その年の誕生日、後輩達からは一枚のパネル写真を贈られました。
見ると…すんごく真剣に自分の洗濯したパンツを乾している田野の健気(?)な姿が
そこにありました。あいつ等ぁ…。
牧場のテーマソングも作ったっけ…♪LIVEをリタイヤしたギターも寄付しました。
2〜3年前に行った時に、まだそのギターを現役で大切に使ってくれてたのが嬉しかった!
牧場滞在中は、それなりに色々な事がありました。その辺の話しは、また次回にでも…(^^)/
つづく