田野の日本紀行−8
カワヨ グリーン牧場−編(後編)
♪風が吹いて草が揺れる 誰も知らぬ草原に 君と二人はしゃぎまわった
とても素敵な思い出をしまい忘れた 夏の日記…♪
秋風の頃♪より
長期滞在した川要(カワヨ)グリーン牧場では、それなりに色々な事がありました。
今から思えば笑い話で、いい思い出です。
そんなエピソードや周辺の話を幾つかご紹介しましょう。
☆カワヨ 人参(ニンジン)全滅事件♪
ある日の夕食の準備中…
お母さん「田野君、裏の畑から春菊を採ってきてちょうだい」
田野「わっかりましたぁ!」
食材はいつも裏の畑から新鮮な野菜を調理の直前に採ってきます。
「春菊かぁ…え〜と…」ほどなく田野は春菊らしきものが地面から生えてる(?)のを発見。
「なんかイメージより細いなぁ。まだ時期的に少し早いんかな?その分たくさん摘んでやれ!」
籠一杯の春菊を手に颯爽と帰ります。皆に自慢げに獲物を見せると…全員固まっている…
悪い予感…嫌な空気…。
その年の秋、カワヨ牧場から葉書が来ました。
「今年は例年になく豊作でしたが、なぜか人参だけが全滅です!」
ドッヒャァ〜!ニンジンの葉っぱだったんだぁ…。
次の年、カワヨ牧場では人参Tシャツ、人参シール、人参バッジが
キャラクター商品として?売られるようになった。これ、ホントの話しだからコワイ(+_+)
この人参事件は伝説(?)として後輩から後輩へ語り継がれていきました。トホホ…
☆カワヨ 蝿取り達人♪
宿泊客が出発し、午前中の掃除が終わると、窓を開け放つ。
すると牛舎から飛んでくる蝿がどうしても入って来ます。
きりがないからいいと言われますが、やはり宿泊客に清潔感を感じてもらいたくて、
田野はしばし蝿の駆除に没頭します。
両手に蝿叩きを持ち、その目は獲物を狙う鷹のように鋭く、戦闘モードに突入。
必殺技を次々と編み出し、蝿を仕留めて行く!
いつしか「カワヨ蝿取り達人」と人々に笑われ…× →感謝された…と思う…かな…?
@天井返し
蝿叩きを左右にWで持ち、垂直ジャンプ!天井に止まった蝿を頂点で叩き、
着地と同時に蝿が机に落ちぬよう反対側の蝿叩きで部屋の一角に空中でノックする…
というカワヨ史上最高の美技!
A網戸返し
網戸に止まった蝿を、網戸が破れぬように表面を鋭く一閃すると同時に手首を返し、
網戸の裏側に凹の力が加わわらぬように仕留める技!通が賞賛する秘技!
B空中殺法
空中を飛んでいる蝿を「シュッ」としなやかな一振りで仕留める技!
スナップが甘いと絶命させられない為、脇を締め、無我の境地になれる事が必要!
別名…石川五右衛門?座頭市?
Cトリプル殺法
至近距離にいる複数の蝿を、一振りで3匹同時に仕留める技!
気合一振り、蝿3匹が床に落ちると、スタッフからは「ほう…」と感嘆のため息が漏れる!
得意満面(^^)/
これらの秘技は、帰郷後写真集としてサークルに回覧され、
その鋭く真剣な眼差しは、後輩達の賞賛と尊敬の対象となった…?
「ああはなりたくない…」 ん?なんでやぁ〜!!!
☆カワヨ 意味なし火傷事件♪
ある夜、牧草畑の丘の上で、車座になって寝転び、星を仰いで語りを入れて呑んでいた時、
当時ウイスキーの空瓶に煙草の煙を溜めて火を点けると綺麗な炎が瓶中を駆け巡る…
というのが流行っていて、泥酔した田野がこれを試みる…。
火を点けた瞬間に指を瓶の口にハメてしまい、そのまま「シュボッ」っと引火して
手に火傷を負ってしまうが、酔ってたので、熱いとも痛いとも感じず、田野はその場で
寝込んでしまったそうな…zzz。
健気な後輩達が、男子は田野を抱きかかえてベッドに連れて行き、
女子は天然のアロエを探してきて、田野の傷を手当てしてくれました。
処置がよかったのでしょう。そこそこの火傷でしたが、今は殆ど跡形もなく治っています。
帰京後、自分で「名誉の負傷」と言いふらしましたが、
「全く無意味で無駄な負傷」と密かに公に?囁かれていたらしい…。
益々後輩に頭の上がらぬ田野でした。でもホント…感謝!
☆カワヨ 羊達の反乱事件♪
やはりいつものように丘の上で寝転んで星を仰いでいた夜、
例によって爆睡モードに入った田野の枕元に、優しい女の気配…。
「くすぐったいよ…」 まどろみながら手を頭の上にやると、柔らかい髪の感触。
巻き毛のパーマの女の子?誰だろう?まぁいいや!
「寝かせてくれよ…こら、くすぐったいってば…あは、耳を舐めるなよ…
君、誰だっけ?名前は?ねえってば…」ぼやけていた意識が少しづつ戻ります。
「Meh 〜〜〜♪」 ん?え?わお!な?な?何だぁ?ぎやぁ〜!ひ、ひつじやぁ〜〜〜!!!
確かに雌♀だけど…ひえ〜!
その夜、集団大脱走を試みた羊達を牧場のスタッフは夜通し追いかけ、全員徹夜…
全て捕獲出来たのは翌日の昼近くでした。はい…何故か我々も寝不足です(+_+)。
☆カワヨ 露天風呂の惨劇事件♪
カワヨの敷地内に温泉露天風呂ができた頃、早々に入らせてもらいました。
最高に気持ちいい!一面の緑と青い空!渡る風!天国ぅ〜!しかしここは牧場。
牛にたかる大型の虻(=あぶ)が飛んでいます。刺されると痛痒く腫れあがるので、
手で払ってやり過ごしていましたが、しつこく飛んで来るので、
「よし!一気に出て脱衣所まで走ろう!」
ドバーッ!出る!脱衣所に走る!走る!ブーン…あ!来た!手で払う!
Tシャツを着て…パンツを履い…わ!何だ?股間の真中の…センターポールより下の…
たわわな二房の左裏側が…チク!手で払うと…思いっきり…あ、あ、虻じゃ〜!やられたぁ〜!
何でよりによってこうも漫画チックな展開にぃ〜!その後の事は…書きたくない…(+_+)
☆カワヨ 肝試しの夜の秘密♪
ミーティングでの怪談話ネタを色々仕入れる内に、牧場のスタッフ達が面白がり、
恐山から流れて来る宿泊客が背中に霊を背負って来るだの、
牛の怨念がその辺におんねん?だのの話しをでっち上げ、
ある部屋のあるベッドに一人で泊まると金縛りに遭い、窓から少女が覗いている…
という誰かの作り話が一人歩きして、田野もいつしか暗示に掛かっていました。
夏の始めはまだ宿泊客も少なく、その部屋がまだ使われていなかったので、
安全確認と肝試しを兼ねて、田野がその部屋に一人で泊まる事になりました。
夜11時頃、その部屋で一人ベッドに入ります。不気味なほど静かです。
窓の外には、遠くに夜汽車の車窓が連なって行くのが見えます。
う!か、金縛りかぁ!う、動けない…とそのまま朝まで爆睡してしまいましたぁ!
朝、爽快に目覚めて後輩達に報告します。「全然大丈夫!OKOK!」その日の掃除の時、
ふと気がつきます。あ…ベッド間違えた(ー_ー)!!…黙っとこ!
☆初体験満載♪
乳牛と羊をメインに飼育するカワヨ牧場には、当時はなぜか「どさんこ」と呼ばれる
日本馬が一頭いました。田野が八ヶ岳の前に、初めて乗馬をしたのがこの牧場です。
ケツが痛かったけど、ワクワク体験でした。
更には「羊刈り」も経験しました!これ、結構ビビリます。肌が柔らかくて、
どこまでバリカンを入れていいのかが判り難い…。肌を傷付けそうでおっかなかったなぁ。
でも羊毛って…不思議なくらいフワフワで、気持ちいいですよ!
でかいトラクターや4Tトラックも運転させてもらいました。
滞在中、牛のお産にも立ち会いました。逆子で難産だった為、深夜にまで及んだお産。
その子牛の前足が出ると、そこにロープを結んで、母牛の息みに合わせて皆で引っ張りました。
無事生まれた時は、何とも言えない和みの空気が牛舎に漂いました。
新しい命の誕生は、やはり神秘的です。感動しました。皆が子牛に注目する中、
牛飼いのオガさんだけは母牛を撫でています。
心なしか目が潤んでいるように見え、田野もグッと来てしまいました。
☆思い出は星の数♪
語りきれない程に思い出があります。牧場祭り(収穫祭)で、
近くの三沢米軍基地の兵隊や地元の方々の前でギターを弾いて歌った事もあります。
敷地内で迎賓館と呼ばれる牛飼い頭のオガさんの家にもご招待頂き、
秋田美人の奥さんの手料理もご馳走にもなりました。
牛飼いのケイゴさんに付き合って、秋田県の小坂という小さな鉱山町に行き、
帰りに立ち寄った大湯温泉の赤提灯で、初めて演歌をいいなと感じました。
牧場内にはお洒落なロッヂもあり、レストランでは素材が贅沢な本格フレンチが楽しめ、
クラシックコンサートなども催されます。帰る日は、お父さんがこのレストランで労ってくれます。
ワインも極上!でも同時にそれは長い旅の終わりです。
名残を惜しんで、一気に都会に帰ってもギャップがあるので、4〜5日ふらふらと
東北を旅しながら帰るのがまた好きでした。
今でもこの空の果て、遥かなる北国に、カワヨ牧場は元気に頑張っているんです!嬉しいな!
おしまい