遥か遠い山の里…高知県東津野村は神秘なる高原の村。
いつもの大正町への道を、窪川に出る峠の手前を右折して西進する。
素朴な土佐の山の民が暮らす裾野には、お爺さん、お婆さん達の
笑顔また笑顔…神々しいとさえ思える。
道は少しずつ登り坂だ。やがて薄っすらと霧に包まれてくると、
雲が山にかかっている中を走っている事に気付く。行き交う車も少なく、
カーブが増えて来る。東津野村は、童話に出て来るような美しい村。
やがて四万十川源流を示すモニュメントの碑に到着する。
国有林である不入山(いらずやま)より流れ出ずる湧水流を
国土地理院も四万十川本流と定めている。ほぼ同じ所を水源とした
二つの湧水流の、一つは大野見村方面へ流れ、四万十川に…
一つは檮原町方面へ流れる檮原川となって、ご存知大正町で、
再び四万十川の本流と出合って合流し、大河を形成する。
源流のすぐ下流に、この『源流の碑』はあり、車はここまで。
車を降りると、凛とした空気を感じる。あとは徒歩になる。
深山幽谷の名がぴったりの、少しきつめの原生林のコースを行く。
夏でも涼しくて快適だが、みるみる汗が吹き出してくる。
源流に到るまでには堂海公園や義堂・絶海の像、森林センター、
秋葉洞等があり、ポイントには必ず「源流点」の標識が立っていて、
道に迷うことはない。美しい風景を愛でながらの森林浴だ。気持ちいい。
渓流の瀬音、鳥の声、美味しい空気、透明に澄みきった水。
全てが清流・四万十川の源流ならではの世界観だ。
早足で20分、のんびり行っても40分程で…かの聖地。
「渡川(四万十川)源流の地」という素朴な碑が妙に似つかわしい。
透明に澄みきった湧水が、苔むした大自然の岩肌を滑るように
絶え間なく流れる。清流の水音が、静かな渓谷に染み渡る。
幾多の伝説に包まれた四国山地の霊峰の中の、
うっそうと樹林が生い茂る東津野村・不入山の南東部、標高1200m。
日本最後の清流として知られる四万十川の源流は、
その緑ゆたかな原生林の、最も奥深い山懐に、確かにあった…。
その水面に手を入れて顔を洗い、水を飲む。冷たくて美味しい…!
その流れに口付ける。例えようもない浮遊感が全身を包む。
大河の命が生まれ出ずる所をこの目で確かめ、触れ、感じ…。
この水達が土佐湾の海に注がれるまで、長い旅を重ねながら、
幾つかの村や町を経て、多くの生命達を育み、人々の暮らしを潤し、
たくさんの景観や物語を形成するんだと思うと、気が遠くなるような感動と、
愛おしさで胸が一杯になりました。
遥か遠い山の里の、大河の命の生まれ出ずる美しい村へ、
その感動に触れに、いつか皆さんもいらっしゃいませんか?(^^)/
おしまい
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