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田野と四万十川の話−12


邦画の名作 編


目覚めた時 朝霧の中
川の流れる音を聴いたみたいで・・・
遥か遠い山の里に
その地はあると感じた
若い日の夢・・・

「四万十川♪」より


 四万十川周辺を舞台にした映画やドラマは意外と多い。よく通った分、
 人より敏感に情報をキャッチし、観た。知っている風景や市町村が出て来ると、
 それだけでうるうる来る。そんな邦画の舞台としての四万十川をつれづれに書いてみる。


 *祭りの準備(中村市) 

 江藤潤、原田芳雄、竹下景子らが主演した、青春群像映画。四万十川そのものではなく、
 文化や風土、人間模様に焦点をあて、一人の青年の心理描写を軸とした映画。江藤潤や、
 竹下景子が初々しい反面、おどろおどろしい人間臭さが生々しくプンプンと臭う映画だ。
 高知県中村市出身の、ソニーミュージック・エンタテイメントのY元プロデューサーが
 「あの映画は冗談抜きで、マジに脚色なしの我々の青春群像そのままだ!」
 とおっしゃっていたのが印象的。一般受けするかどうかは別として、邦画の傑作だと思う。


 *郷愁(中村市)

 西川浩司が主演した、やはり風景というよりは土に根ざした人間模様を、
 思春期を迎える少年の目を通して描いている。美しい姉と、群れる男達との狭間で、
 変貌していく姉の刹那を複雑に感じていく少年の心理描写が秀逸だった。
 脇を津川雅彦、吉行和子、希々樹林、斎藤洋介等、壮々たるメンバーが固め、
 説得力のある作品に仕上がっている。でもやはり一般受けはしないかもしれない。


 *魚のように(中村市)

 高岡早紀、藤谷美紀らが主演した単発ドラマ。聡明で早熟な高校生の葛藤と成長を、
 美しい映像を織り交ぜながら描いたNHK制作の佳作だ。サイクリング旅行の途中、
 立ち寄った旧家に偶然泊まった夜の、高岡と藤谷の不思議な心理描写の場面は、
 有り得ない美しい映像をあえて使う事で絶妙な効果をあげているように思う。
 スマップにいた森君や、岸部一徳、長塚京三等の脇も絶妙だった。


 *絵の中の僕のむら(吾川村)

 原田美枝子の主演で、実在する双子の絵本作家の少年時代の回想を軸に据えた映画。
 ロケ地に凝りに凝っただけあって、風景や川の美しさは絶品。音楽には欧古楽音楽を用い、
 和楽を廃す事で、返って和が際立ち、全編のトーンに実に効果的な空気を作っている。
 切なくもコミカルに成長していく双子ちゃんの姿や心理を、ドキュメント風に描いている。
 この映画がベルリン国際映画祭で銀熊賞を取っている事はあまり知られていない。


 *四万十川〜あつよしの夏(西土佐村

 田野が四万十川に通い出すきっかけとなった、TVの二時間ドラマの映画版である。
 TVでは泉ピン子と小林念持が主演だったが、映画では樋口可南子と小林薫の組み合せ。
 同じ原作でも、脚本や監督によってかくも違うという典型を見るようで、中々面白かった。
 兄弟の中で、おっとりしておとなしいと言われる少年あつよしの感性・・・転校生チヨコへの
 子供世界特有の差別への違和感、飼猫への愛情、兄弟の葛藤や両親の苦悩等を
 子供の目線で追い、大きく成長していったひと夏を、大河「四万十川」の様々な表情を
 巧みに心理描写に用いた秀逸の映画だ。ファーストインスピレーションもあるだろうが、
 田野的にはシンプルで淡々と描かれたTVドラマの方が好みである。川の風景の機微も、
 リアルに美しく撮れているように思える。女優陣を比較して云々言う気はないが、
 この役の場合は「樋口可南子」より「泉ピン子」のもんぺ姿の方が、断然説得力あった(爆)


 この他にも知らない映画やドラマが多くあるのだろう。機会があれば是非見てみたい。
 でも年々周辺整備がなされ、反面清流としての生命の危機に瀕している大河「四万十川」。
 行く度にその変化を見せつけられ、心が傷くて辛い・・・という一面が田野にはある。
 だからこそ、遥か遠い山の里の風景を、人と心象風景を絡ませて描いたこれらの作品群は、
 永く語り継がれて欲しい文化・財産であり、失ってはならない故郷のように思えてならない。

                                             おしまい

いつか訪ねてみたいと思っていた
そこがどこかも 知る術も持たぬままに
君の故郷四万十あたり 僕は足を止めてみる
そしてこの手で 君を抱きしめている・・・

「四万十川♪」より