田野と四万十川の話ー9
風景林−編
☆中津川・風景林
名所、旧跡、社寺等の背景や景観展望地点等から望見される森林で、特に
風致の維持に配慮する必要のある地域を、林野庁が風景林に指定しています。
秘密のスポット。四万十川の支流「檮原川」の、更に支流の「中津川」を遡ると、
「丸木の森 風景林」があります。いい所です。日本名水百選の湧水を有し、
キャンプも出来ます。深く淀んだ淵は飛び込みも出来き、アマゴなどの魚も
一杯います。変化に富んだ上流域ですから、川遊びが本当に楽しい、
山も森も深い隠れ家です。人の通らない所には天然の綺麗な苔が生えています。
でもいつも多少のキャンプ客や、名水を汲みに来る地元の人達で、
ある程度の人の気配があります。寂しくはないけれど、人が入っていると
面倒なので、ここを基点に人が入り難い秘密の川原を探してみます。
☆秘密のスポット探し
風景林から川沿いの細い道を少し走ると…あったあった!川原まで
急な斜面を降りなければならないが、木々の合間から広めの川原が見える。
急斜面を慎重に降りると、果たしてそこは人が来た痕跡のない川原と、
目の前には、綺麗な川…深くて神秘的な淵があります。「しめしめ…」
急斜面を降りていき、マットを敷いてパラソルを立て…完璧だぁ!
なんていい所!貸し切りだぁ!持って来たポットのお湯で、カップ麺と
おにぎりの昼食を準備。泳いだ体は冷えるので、これが暖まってありがたい!
果たして…美味い〜!ん?何だ?今の野太い羽音?ゲゲッ!
ス、スズメ蜂だぁ〜!カップ麺の匂いに誘われた?「みんな逃げろぉ!
あ、荷物…よし、俺がオトリになる!こらスズメ蜂!カップ麺はこっちだぞ!」
蓋を全開したカップ麺を持って、田野は川の方へダッシュ!
わ、笑わないで下さい…。
☆死闘!スズメ蜂vs田野!
もう必死です。膝まで水に浸かった田野を目掛けてすずめ蜂は襲ってきます。
田野は深い淵へ逃げます。「みんな、早く逃げてくれぇ!」 祈る思いで
蜂を引きつけ、右手に割り箸…左手にカップ麺を持ったまま、手の先だけを
水面から出し、頭からスッポリ水中に隠れて、割り箸を振り回して
蜂をやりすごします。笑っちゃいますが、本人命懸けです。みんなは
逃げられる体制を整え、田野とスズメ蜂の壮絶な死闘(?)を見守ります。
体が冷えてくる…が、蜂は頭上を行ったり来たりしている気配。寒い。
「そうだ!カップ麺が匂う内は蜂は去らない。体も冷えているからこのカップ麺を
食っちまえば全て解決する!」 この極限状況で、なんと沈着冷静な好判断…?
田野は、川面から手と首だけ出して、カップ麺を食べ始めました。
体の外側が冷え、内側は熱い食感。なんか妙?あ、蜂だ!頭ドボーン。
一杯一杯です。な、何で助けた身内が向こうで笑ってるんだろう?
この命懸けの勇姿を何と心得るかぁ!こら!写真なんか撮るな!
笑うな…笑います?笑いますわねぇ…(+_+)
☆発見!絵の中の風景…
「ここは駄目だ!」 見切りをつけて、その先を探します。しばらく行くと…
人の入った形跡は確かにあるけど、誰もいない、正に絵に描いたような
理想的な川原を見つけます。美しい淵・淀み・流れ…深い森の景色…
名所「風景林」の山を隔てた反対側…裏風景林とでも呼ぶべき所に
それはありました。田野は以来、四万十川を旅する時、必ずここを
一度は訪れることになります。多い時は2〜3回来るかな・・・。
遥か遠い山の里の、映画の場面のような美しい川原と蒼い淵。
朝、昼、夕で、同じ風景なのに色も表情も違うんです。
時々、思いっきり地元のおっさんが遠方の親戚のガキ共を連れて、
先客がいても図々しく入ってきますが、そんな時は地物の獲れたて野菜や果物、
バーベキューをご相伴に預かります。それもまた楽し!でも50%以上の確率で
貸し切り状態なのが嬉しいですね。目の前を青大将が、川を泳いで
渡って行くのも見ました。カジカもアマゴも、清流にしか生きられない
川魚の美しい魚体を初めて見たのもここ!もちろん天然です。
いい所なのに人の痕跡がない所は、スズメ蜂の巣が近い…獣の通り道…
マムシが出る…苔むした岩だらけで滑る等、危険なのかもしれません。
でも鬱そうとした森や立ち木に覆われていても、微かな道の痕跡があれば、
人が入ったということ…。一つの目安かも…。でも自然と遊ぶ時、
いくつかの危険は耐えず背中合わせだという事は頭に入れておかないとね!
泳いだり、潜ったり、ボードで天然ウオタースライダーしたり、釣り糸を垂れたり、
川海老やモズク蟹を探したり、お弁当を食べたり、一服したり、
川原に大きな岩風呂をこさえて、捕まえた沢山の清流魚を放ったり…
あっという間に一日が過ぎます。あ〜ぁ!四万十川に来ると、
なんでこんなに一日が短いんだろう?仕方ない…帰って温泉にでも入るか!
遊びきれない四万十川で、さぁて…明日はまたまた何をして遊ぶかなぁ〜(^^)/
つづく