田野のつれづれ日記−20
サウジの暑い砂漠の風 編
2009年の2月。仕事の部署をまた変わった。可能性を試すには、今度の分野は大変だが面白い。
そして2月の後半。急遽羽田からかつての仕事の象徴でもあった関西空港に飛び、
慌ただしくエミレーツ航空に乗り継いで、中東はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに向かった。
早朝にドバイ着。想像以上に綺麗だ。う〜ん、派手〜!
中東随一のハブ空港を誇るドバイ空港は、更に増築新装オープンしたばかりとかで、やたらでかい。
オイルマネーと観光バブルで沸くドバイだが、世界的金融不況の波は確実に押し寄せているようだ。
建設中の海洋リゾート都市の工事は遅れ、話題となった豪華客船クイーンエリザベス号は、
最後の航海後にフローティングホテルとなるはずの予定が、航海の目途も立っていないという。
ここにはうちの駐在事務所があり、意外にも昔の知った顔が出迎えてくれた。嬉しいビックリ♪
駐在員達が住むマンションで仮眠を取る。ナチュラルハイでうとうとするだけなので、
朝からビールを飲み、ゆったり過ごす。マンションから見える海はまるでリゾートの風景だ。
街中をドライブ。面白いなぁ。港町で活気があるが、海は綺麗とは言えない。
海洋リゾート都市の綺麗な海の映像や写真は、どうもまがい物のようだ。
ベリーダンスのカラフルでかわいい、しかし際どい衣装が大胆にディスプレイされている。
お土産にいいなぁと思ってしまうが、ここだからそう思うので、
ついつい買って帰って日本で開けたら、ヒンシュクものかもね(笑)
新聞にはアラビア文字が踊る。まったくわからん???
再びドバイ空港へ。今回はここドバイは中継地。仕事の目的地はサウジアラビアだ。
敬謙なイスラム教の国々の中でも、聖地メッカを有すこの国は一段と戒律が厳しく、
一滴のアルコールも飲めない日々が続くことになる。
紅海に臨む港町「ジェッダ」に着いた。海の向こうはもうアフリカ大陸だ。
子供のころにジャングル大帝や狼少年ケン、少年ケニヤ等で憧れたかの地がすぐそこに…。
まぁその前に、数々の伝説と歴史と文化の国「サウジアラビア」を堪能…んにゃ、仕事しよう♪
といってもこの国は観光で儲ける気などさらさらなく、下手に写真を撮っただけで拘束されるそうな。
こえ〜!決死の車中からのショットで伝わるかなぁ〜?太目のお婆さんでも、写真を撮ると即逮捕…
ひゃ〜!割が合わね〜!
しかし眼だけ覗かせた女性達は妖しげでちょっと神秘。綺麗な人が多いのかも。
王室系の建物はどこも立派だなぁ。でも貧富の差は露骨なまでに明らかな国だ。
オイルマネーが潤沢な国だから、商売っ気は感じない。建物も怪しげだが、嫌な気はしない。
ホテルの部屋にはどこも聖地メッカの方角を示す目印がついている。皆本当に敬謙なのだ。
馴染んでくれば、お祈りの時間やコーランの読経も決して不気味ではなく、むしろ神々しい。
嬉しかったのは、サウジの食べ物はハッキリ言って美味い♪ただ豚肉はご法度。
でも鶏肉やラム肉が豊富に出る。豆を磨り潰したペーストも美味♪
カレー味の焼き飯に鶏肉がふんだんに紛れているカプサ…癖になる!
巡礼者はタオルのようなものだけを体に巻いて正装する。
しかし彼等はトイレや洗面所で処かまわずお清めをする為、殆どの所が水浸しだ。
あぁ、ホテルや空港のラウンジなどの綺麗なトイレも水浸しだったのはそういう事か!
後で解った(笑)。トイレだけはホテルの自分の部屋がやっぱり一番落ち着くぜ♪
3日ほどいて、首都リヤドへ。
ドバイからのフライトでは天気がイマイチでよく見えなかったが、これが砂漠…圧巻だ!
よくサンゴリーフの海で、白い砂地と岩礁が入り混じる光景を見るが、
その海から水がなくなったような…そんな風景を想像して欲しい。それがアラビアの砂漠だった。
この国の道路は比較的整然としているが、砂っぽい(笑)。交差点は必ずロータリー形式。
まぁパリと一緒だと思ってくれればいい。ロータリー中央には必ずモニュメントが…
でもよくは判らない(笑)。
しかしよくまぁこんな砂漠の土地を切り開いて歴史と文化を育んで来たものだ。
砂嵐などで飛行機が欠航するなどは日常茶飯事なんだそうな(汗)…う〜ん、頷けるなぁ。
国内線では預けた荷物が出て来ない…なんてのも当たり前なんだそうな…ひえ〜!おいおい!
実際のアラビックは富裕層で、あまり働かないらしい(笑)。
税金は左程取られないらしいが、オイルマネーで福祉は充実しているそうな。う〜ん。
この国の労働を支えているのは、インドやパキスタンやアフリカ大陸、そして周辺の
石油の出ない国々から来ている移民達。彼等は気さくで人がいい。
しかし内には当然色々と秘めているのだろう事は想像に難くない。
何故酒も飲めないサウジへ?政情が王室のお陰で安定しているからか?少し謎だった。
土が少ないサウジでは、ついぞ畑というものを見なかった。
街道沿いには、周辺の貧しい国から野菜や果物を売りに来た連中が店を広げる。色とりどりの果実。
綺麗で美味しそうだ!お金のあるアラビックに比べ、土と共に生きる彼らの心が貧しいとは思えない。
再びジェッダに戻る。サウジにも慣れて来たが、乾いた体に一杯のビールを流し込みたくなる。
空気は乾き、始終黄砂に見舞われているような空気。そこへ排気ガスも無秩序だ。喉にいい訳ない。
夕暮れの市場は混沌としている。むせ返る匂い。その中を怪しげな女達が行き交い、
やがて闇に塗れるように見えなくなる。港に陽が沈む。少々旅にも疲れてきた。
深野義和さんの曲「蒼い砂漠」の、特にラストのフェイクの歌声が、頭の中を何度もリフレインする。
この国にいる間、田野はこの曲に随分と救われた。恐ろしくこの国の空気に合っている。
我々作り手の持つ、これが不思議な感性なのだろう。行った事のない場所。見た事のない風景。
時にはその方が、想像力だけで作った曲の方がリアルな事がある。田野で言うと「魂の轍」がそれだ。
とにかく敬愛する兄貴分の曲にこの旅は救われ、支えられたような気がするのだ。う〜ん、名曲だ!
最終日、ジェッダから再びドバイへ。途端に開放的なトーンになる。免税店もすんごい数。
でも少し疲れてたし、行きも帰りも夜行便なので、ドバイの空港ラウンジでしこたまビールを飲み、
煙草を吸い貯めしてまったり過ごした。
午前3時半。エミレーツ航空のビジネスクラスシートに収まり、熟睡する。
日本人キャビンアテンダントの対応、気配り、声…心地よい。やはり日本人女性が最高さ♪
飛行機が関空に着く頃、遥か遠かった中東の国々が、自分の中でとても身近になった。
そして帰国後、田野は「ジェッダの風」という曲を一心不乱に書き上げたのだった。
おしまい
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