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田野と八ヶ岳の話−6

高原へいらっしゃい!編

「約束♪」から…

♪山は今でも 昔のように 君が見たように

       そこにあるだろうか? それが知りたい… 明日旅立とう♪

 昔、今は亡き俳優「田宮二郎」さん主演で、山田太一さん脚本のドラマ
 「高原へいらっしゃい」ってあったの知りませんか?三田佳子や益田喜頓や由美かおる、
 尾藤イサヲ、北林谷栄、池波志乃、前田吟等、バラエティに富んだ出演者群。
 どこかの金持ちが無計画に建てて赤字続きで倒産した高原のリゾートホテルを
 再建するという特命を受けた田宮が、様々なフィールドから人材を引き抜き、
 皆で再建の夢にかける…という、安易で判り易いストーリーが却って楽しいドラマでした。
 高原列車「小海線」の風景だけで構成されたオープニングには、小室等さんの
 「おはようの朝♪」が流れ、妙に清々しい印象に仕上がっていて、結構好きでしたよ!

 ドラマは、荒廃したホテルに田宮二郎扮する支配人が、各方面から引き抜いた
 シェフ、ベルボーイ、フロントマン、ボイラーマン、ウエイトレス、バーテン等が集められ、
 ホテル再建計画を初めて打ち明けるところから始まる。一流ホテルマンだった支配人は、
 鉄鋼王の娘と結婚するが、ある事件を機に酒に溺れて駄目になり、
 鉄鋼王が娘との婚姻関係の存続条件として、
 系列として不良債権の肩代わりをした高原のホテルを3百万円の資金で再建せよ…
 との課題を出す。妻を愛していた支配人は、最後のチャンスとして、
 失敗したらホテル業界からも追われ、妻も失うというリスクの中で再建に乗り出す。
 しかし集められた面々は、資金3百万円では給料も出ず、
 ホテルを改修する業者も入れられない。
 何もかも自分達で、給料なしでやれというのでは誰も信用しない。

 しかし、集まったメンバーにもそれぞれの事情や思いがあり、何かを変えたくて
 この高原のホテルに来たのも事実。支配人の誘いを、ターニングポイントと捕えて
 心が動いた者ばかり。条件のひどさに愕然としたものの、前の職場に戻るのも
 気力が伴わない。自分を変えたくて全てを投げ打ってやり直し、生まれ変わろうと
 一度はこの高原にやって来た。朝夕の八ヶ岳の勇壮たる光景や、
 高原の空気、鳥の声、空の色…都会に戻ったところで知れている。
 失うものがないなら、いっそ駄目元でこの高原でやるだけやってみるのも生き方か…
 という心境になり、揺れながら、ぶつかりながら、ホテルの再建にやがて心を
 一つにして行く…夢があって、シンプルでいいっすよね!

 最後の最後に、雑誌だったかの記者が、ホテルを取材して宣伝してやるからとの事で、
 従業員総動員でサービスをするが、この記者が食わせ物だった…。切り札も使い果たし、
 資金も尽きてしまった。やるだけやったが駄目だった…明日で解散しよう…
 と打ち上げをしたその次の日、食わせ物記者が良心の呵責に耐えかねて奔走し、
 ホテルのPR記事だかを雑誌に出した事で、途端にお客様が押し寄せ始め、
 めでたしめでたし…ってなドラマだったと記憶してます。この判り易いテーマに、
 そこそこの現実感を絡ませ、夢の実現を大自然を背景に描いた物語でした!

 モデルとなったホテルは、実際に野辺山にあります。
 その名を「八ヶ岳・高原ヒュッテ」と言います。八ヶ岳の裾野の緑の丘陵地帯の丘の上に
 ポツンと建っていたそのホテルは、ドラマ後は新名所となり、大変な賑わいです。
 小海線も赤字路線から花形へと変貌した時期ですね?
 「戦略だ!躍らされるな!」まぁまぁいいじゃないの、そんなに目くじら立てなくても。
 行ってみたくなりますよね?随分前ですが、行っちゃいましたぁ!予想はしていましたが、
 人がすごく多かったぁ。こりゃ泊まっても落ち着かないわ!
 ケーキとコーヒーでお茶しましたが「混んでるぅ!」という印象で、
 ドラマにあったような雰囲気はそりゃあないよなぁ〜!

 それから何度もこの地を訪れる事になるとは、あの頃は思ってもみなかったけど、
 その間に素朴な高原列車の沿線は激変しました。バブリーなホテルも乱立し、
 別荘やペンションが立ち並び、深い森が切り開かれ、無駄な有料道路まで出来てしまい、
 清泉寮もサナトリウムも、もうかの地でもなんでもありません。
 GWや夏休みは凄まじい賑わいです。あのドラマの車窓の風景で変わらないのは、
 唯一八ヶ岳だけなんです。

 そして八ヶ岳高原は新しい顔を見せ始め、今田野が通うかの地には「あの頃」ではなく、
 「これから」があります。「八ヶ岳・高原ヒュッテ」にはしばらく行っていません。
 時々ドラマを思い出して、懐かしく思う時があります。近くはよく通るんだけど、
 どうなってるかなぁ?堅実な経営手腕で今も沢山の人が訪れているんだろうなぁ…
 もしかしたら人々から忘れ去られて本当に赤字経営に陥ってたりして?
 …そしたら経営再建に乗り出すかぁ(ナンテ…)?
 少なくとも田野の中の、八ヶ岳高原への印象に、
 あのドラマが爽やかな好影響を与えてくれたのは確かなんです(^^)/


                                     おしまい